敬天愛人フォーラム21 西郷隆盛に学ぶ
南洲翁遺訓 第16条

南洲翁遺訓 第16条

原文

節義廉恥を失ひて、国を維持するの道決して有らず、西洋各国同然なり。上に立つ者下に臨みて、利を争ひ義を忘るる時は、下皆之に倣ひ、人心忽ち財利に趨り、卑吝の情日々長じ、節義廉恥の志操を失ひ、父子兄弟の間も銭財を争ひ、相ひ讐視するに至る也。此の如く成り行かば、何を以て国家を維持す可きぞ。徳川氏は将士の猛き心を殺ぎて世を治めしか共、今は昔時戦国の猛士より、猶一層猛き心を、振ひ起さずば、万国対峙は成る間敷也。普仏の戦、仏国三十万の兵三カ月の糧食有りて降伏せしは、余り算盤に精しき故なりとて笑はれき。

現代語訳

道義を守り、恥を知る心を失うようなことがあれば国家を維持することは決して出来ない。西洋各国でも皆同じである。上に立つ者が下の者に対して利益のみを争い求め、正しい道を忘れるとき、下の者もまたこれに習うようになって、人の心は皆財欲にはしり、卑しくケチな心が日に日に増し、道義を守り、恥を知る心を失って親子兄弟の間も財産を争い互いに敵視するのである。このようになったら何をもって国を維持することが出来ようか。徳川氏は将兵の勇猛な心を抑えて世の中を治めたが、今は昔の戦国時代の武士よりもなお一層勇猛心を奮い起さなければ、世界のあらゆる国々と対峙することは出来無いであろう。普、仏戦争のとき、フランスが三十万の兵と三ケ月の食糧が在ったにもかかわらず降伏したのは、余り金銭のソロバン勘定に詳しかったが為であるといって笑われた。